未来を創る「考え方」を育てよう:親子で始めるデザイン思考
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予測が難しく、変化のスピードが速い現代において、子供たちが将来直面するであろう様々な課題に対し、どのように考え、解決策を見出していくかは、多くの保護者様が抱える関心事の一つではないでしょうか。既存の知識や答えだけでは通用しない場面が増えてくる未来において、自ら問いを立て、試行錯誤しながら前に進む力は、ますます重要になります。
今回は、そのような未来を生き抜くために役立つ一つの「考え方」として、「デザイン思考」をご紹介し、親子でどのように探求できるかについて考えてまいります。
デザイン思考とは何か
デザイン思考とは、デザイナーが何か新しいものを生み出す際に用いる思考プロセスを、ビジネスや社会課題の解決に応用した考え方です。単に物やサービスを「デザイン」するのではなく、「人間の深い理解に基づき、課題を発見し、創造的なアイデアを生み出し、それを形にして試しながら、より良い解決策を探求する」一連のアプローチを指します。
この考え方の特徴は、常に「人」を中心に据える点にあります。誰が、どのような状況で、何に困っているのか、何を望んでいるのかを深く理解することから始めます。そして、多様な視点から自由な発想でアイデアを出し、完璧でなくても良いので、まずは素早く形にして試してみることを繰り返します。
なぜ子供にデザイン思考が役立つのか
デザイン思考のプロセスは、子供たちが未来で必要とされる多くのスキルを育むことにつながります。
- 問題発見力と共感力: 相手の立場になって考え、隠れたニーズや課題を見つけ出す力。これは多様な人々が共存する社会で不可欠な能力です。
- 創造性と発想力: 既存の枠にとらわれず、柔軟で斬新なアイデアを生み出す力。未来に「ないもの」を創り出す上で重要です。
- 批判的思考力と論理的思考力: 出てきたアイデアや試した結果を客観的に評価し、次にどう活かすかを考える力。
- 実践力と回復力(レジリエンス): アイデアを実際に形にしてみる行動力、そして失敗から学び、粘り強く改善を続ける力。
これらの力は、未知の課題に立ち向かう上で、子供たちにとって大きな助けとなるでしょう。
親子で探るデザイン思考のプロセス
デザイン思考のプロセスは、一般的にいくつかのステップで説明されますが、ここでは子供と一緒に取り組みやすいように、シンプルにご紹介します。
1. 観察して、共感してみよう(Empathize)
まずは、身の回りの人や生き物、物事に関心を向け、「困っていること」「もっとこうなったらいいのに」と感じていることはないかを探します。
- アクティビティ例:
- 家族の中で「少し困っていること」を話し合ってみる(例: 「朝の準備がバタバタする」「おもちゃがすぐ散らかる」など)。
- 近所の公園で遊んでいる人たちを観察し、「どんなことで楽しそうかな?」「どんなことで困っているのかな?」と想像してみる。
- ペットや植物になったつもりで、「何を必要としているかな?」「何をしてほしいかな?」と考えてみる。
- 架空の未来の住人を設定し、「この人は未来でどんなことに困るだろう?」と想像してみる。
重要なのは、自分の視点だけでなく、相手の立場になって感じてみることです。
2. 本当の問題を見つけよう(Define)
観察や共感で見つけた様々な「困りごと」や「願い」の中から、「これを解決したい!」と思うテーマを一つ選び、それが具体的にどんな問題なのかを明確にします。
- アクティビティ例:
- 話し合った家族の困りごとの中から、一つを選び、「〇〇が△△だから困る」のように、具体的に言葉にしてみる。
- 「おもちゃがすぐ散らかる」なら、「遊び終わったおもちゃを楽しく、かつ簡単にもとの場所に戻せない」のが問題、といったように掘り下げてみる。
- 「未来の人が、食べ物を育てる場所が少なくて困っている」なら、「狭いスペースでも効率的に、安全に食べ物を育てる方法がない」のが問題、といったように言い換えてみる。
なぜそれが問題なのか? 誰にとっての問題なのか? を考えることで、解決すべき課題がはっきりしてきます。
3. アイデアをたくさん出してみよう(Ideate)
定義した問題に対し、様々な解決策を自由に考えます。「こんなことできっこない」「変なアイデアだな」と思うようなものでも構いません。量より質、ではなく、まずは量を出すことが大切です。
- アクティビティ例:
- ホワイトボードや大きな紙を用意し、問題を中心に置いて、思いつくアイデアをどんどん書き出す(ブレインストーミング)。
- 「もし魔法が使えたら?」「もし宇宙人が助けてくれたら?」など、非現実的な仮定を置いて考えてみる。
- 既存の解決策(例: おもちゃ箱)の良いところ、悪いところを挙げて、そこから新しいアイデアのヒントを得る。
- 制限時間内にできるだけ多くのアイデアを出すゲーム形式にしてみる。
親子で互いのアイデアを否定せず、「いいね!」と認め合いながら、発想を広げていくことがポイントです。
4. アイデアを形にしてみよう(Prototype)
出てきたアイデアの中から、面白そうなものや、試してみたいものをいくつか選び、簡単な形にしてみます。これは、実際に動く必要はありません。絵を描く、粘土やブロックで形を作る、段ボールや廃材で模型を作る、寸劇で使い方を表現するなど、多様な方法があります。
- アクティビティ例:
- 「おもちゃを楽しく片付ける箱」のアイデアを、紙にイラストとして描く。
- 段ボールを使って、新しい片付け箱のミニチュアモデルを作ってみる。
- 新しい通学路のアイデアを、地図の上にブロックやおもちゃを置いて表現する。
- 未来の乗り物のアイデアを、粘土で作ってみる。
早く形にすることで、アイデアの良さや課題が具体的に見えてきます。
5. 試してみて、また考えてみよう(Test)
作ったものを誰かに見せたり、実際に使ってみたりして、どう感じるか、うまくいくか、課題はないかなどを確かめます。そして、その結果から学びを得て、アイデアを改良したり、別のアイデアを試したりします。
- アクティビティ例:
- 作った片付け箱の模型を家族に見せて、使ってみてもらう(フリでも良い)。「これ、どう思う?」「どこが使いやすい?」「どこが使いにくい?」と聞いてみる。
- 未来の乗り物の絵を見せて、「これ、どんな時に乗りたい?」「どんな人が乗ると便利かな?」と話してみる。
- 出てきた意見や気づきを元に、アイデアやプロトタイプを修正したり、新しいアイデアを考えたりする。
この「作って試して、また考える」というサイクルを繰り返すことが、より良い解決策を生み出す鍵となります。
実践する上でのポイント
- 正解を求めすぎない: デザイン思考は、最初から完璧な答えを目指すものではありません。試行錯誤のプロセスそのものが学びです。
- 失敗を恐れない環境を作る: アイデアがうまくいかなくても、「ここから何を学べるかな?」という視点を大切にしましょう。失敗は次のステップへのヒントになります。
- 子供の好奇心を尊重する: 子供が「面白い!」と感じるテーマやアイデアを中心に進めることで、意欲的に取り組めます。
- プロセスを楽しむ: 結果だけでなく、課題を見つけ、アイデアを出し、形にする一連のプロセスを、親子で一緒に楽しむ姿勢が大切です。
結びに
デザイン思考は、未来に待ち受けるであろう未知の課題に対し、子供たちが自らの頭で考え、仲間と協力しながら、創造的に解決策を生み出していくための強力なツールとなり得ます。難しく考える必要はありません。身近な「困ったな」「こうなったら面白いな」から始めて、遊び感覚でそのプロセスを体験してみることが、子供たちの「考える力」を育む第一歩となるでしょう。
ぜひ、この記事でご紹介したアクティビティを参考に、お子様と一緒に未来の課題解決に挑戦してみてください。未来探検隊キッズは、お子様たちの探求心を応援しています。